婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
ブツブツ文句を言う蘭をあしらって追い出そうとする紅真。
やっぱり仲が良いなぁと微笑ましく眺めてしまった。
蘭を追い出した紅真は、改めて菜花に目を向ける。
「綺麗だよ、菜花。すごくかわいい」
「ありがとう。紅真くんもすごくカッコいいよ」
本当にカッコよくて今もときめきが止まらない。
改めてこんなに素敵な人が自分の夫になるのだと思うと、幸せだなぁと思った。
(昔の自分に教えてあげたいな。政略結婚だけど、ちゃんと愛し合って結ばれたんだよって)
大好きな人と結婚するという菜花の夢は、十年越しに叶えられたのだ。
トントンというドアをノックする音と「失礼します」という声が聞こえた。
「はーい」と返事をすると、スタッフの女性がやってきた。
「新婦様に電報が届いております」
「電報ですか?」
「それから、こちらのお花も」
見せられたのはミニブーケだった。
カーネーション、ラナンキュラス、ブルースターやブライダルベールといった花々の可愛らしいブーケだ。
「わあ、すっごくかわいい!」
電報のメッセージを開くと、短くこう書かれていた。
「結婚おめでとう。末永くお幸せに。
拙いなりの思いを込めて」
サラリとした達筆なその文字には、見覚えがあった。
「これ、赤瀬部長から……?」
赤瀬は結婚式には出席していない。
お世話になっている上司ということでもちろん招待状は出したが、仕事が詰まっていてどうしても来られないそうだ。
何度も申し訳ないと謝罪された。