婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
菜花の発案した推しカラーのお花のサブスクサービスはかなり好評で、早くも軌道に乗りつつある。
だが別の新規事業立ち上げにも関わっているらしく、とても忙しいようだ。
新規事業も上手くいけば、赤瀬は一気に役員に抜擢されるのではないかと噂されていた。
着実に次期社長としてのキャリアを積んでいるのだ。
「赤瀬部長、昔は華道部だったんだって。このお花、部長が選んでくれたのかな。すごく素敵」
結婚式でよく用いられるブルースター、花嫁のベールに似ていることから名付けられたブライダルベールという結婚式らしい花。
そこにカーネーションやラナンキュラスという華やかさが加わってとても綺麗だ。
流石は赤瀬と言いたくなるようなセンスが光っている。
「……確かに綺麗だけど、一番菜花を輝かせられるのは僕だから」
紅真が明らかにむくれた表情をするので、思わず笑ってしまった。
「わかってるよ。紅真くんは一番だもん」
「当然」
案外負けず嫌いなところがかわいいなぁと微笑ましくなってしまう。
ふと、メッセージカードがもう一枚重なっていたことに気づいた。
「P.S. 何かあったらいつでも待ってる」
それを見た瞬間、紅真がブーケを持って出ていこうとする。
「この花、突き返してくる」
「待って紅真くん! 大丈夫だから」
「大丈夫じゃない」
「もうすぐ始まっちゃうよ!」