婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。


 蘭も華道家で菜花より三つ年下。
 去年社会人デビューしたばかりだが、蘭もまた学生時代から華道家として活躍していたため、とてもしっかりしている。

 蘭の花のように、凛とした優雅な雰囲気であるがとても気さくで話しやすい。
 義理の妹になるが、同い年の友人のように仲が良い。

 蘭は着物ではなく、ネイビーのワンピースドレスを着ていた。
 ベルトで切り替えしになっており、大人っぽい蘭によく似合っている。


「菜花ちゃん、赤い着物も似合うわね。でもなんでマスク? 風邪引いてるの?」
「いや、会社の人が来てるかもしれなくて……」
「えっ、そうなんだ。いたら教えてね。隠してあげる」
「ありがとう。蘭ちゃんはお着物じゃないんだね」
「動きにくいもの」


 菜花は蘭と一緒に会場に向かった。
 今日のパフォーマンスショーは屋外で行われる。
 庭園の中央で花を生けるというライブパフォーマンスだ。

 菜花は関係者席の隅っこで小さくなっていた。
 同じ会社の人に見つからないか、キョロキョロしてしまう。


(流石に私がこんなところにいるとは思わないと思うけれど……)
「あっ、始まる!」


 蘭が声をあげると、拍手とともに紅真が現れた。
「紅真さーん!」という女性の黄色い声もあちこちから聞こえる。

 初めて会った時は天使のような美少年だった紅真だが、今ではすっかり大人の男性へと成長していた。

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