婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
雛乃は珍しく高校から入学してきた。
外部生というだけで珍しいのに、雛乃は一般家庭だった。
学年首席をキープすれば学費免除、大学進学も有利になるという特待生なのだ。
当時雛乃は絵に描いたようなガリ勉で、全く周囲と関わろうとしなかった。
周りも庶民でガリ勉な雛乃のことを、まるで異星人みたいに見ていた。
だけど、菜花はそんな雛乃に何となく惹かれていた。
席替えで席が近くなり、思い切って話しかけてみた。
「あの、芥子田さん。良かったら一緒にお昼食べない?」
勇気を出して誘ってみたら、雛乃は少し怪訝な表情をしてから答えた。
「私お弁当だから」
高校には高級レストランと変わらないメニューが並ぶ学食がある。大半の生徒はそこでお昼を食べるため、お弁当を持参する生徒はいなかった。
「あ、そうなんだ。お母さんが作ってくれてるの?」
「自分で作ってる」
「えっ! すごい!」
ふりかけご飯に卵焼き、ウインナー、プチトマト、肉野菜炒めにサラダというお弁当の定番メニューが小さな箱の中に詰まっていた。
どれもとても美味しそうだし、これを雛乃が作ったのかと思うと感動した。純粋に尊敬すると思ったが、雛乃は素っ気なく答える。
「どうせ貧乏臭いって思ってるんでしょ? 実際貧乏だけどね」
「そんなこと思わない。本当にすごいよ。私も作ってみようかな」