婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。


「お疲れ様です」
「お疲れ。さっきの企画、良かったな」
「ありがとうございます」
「推しカラー、春海らしい発想だと思ったよ。今日もしっかり黄色着てるもんな」


 赤瀬はニヤニヤしながら菜花の着ているレモンイエローのトップスを見やる。


「私のラッキーカラーなので」
「はは、最近黄色見ると春海のこと思い出すようになってきたわ」
「そこまでイメージが定着して光栄ですね」


 菜花は黄色を自分のラッキーカラーにしている。
 名前の由来となった菜の花が黄色だからだ。
 何となく黄色を選びがちだし、気合いを入れたい時は必ず黄色い服を着るようにしている。

 チームが発足した時の飲み会でその話をして以来、赤瀬は菜花が黄色の服を着ていると「何かあるのか?」と尋ねてくるようになった。


「じゃ、期待してるからな」


 肩を軽くポンと叩き、赤瀬は颯爽と立ち去って行った。
 菜花は軽く会釈をして見送る。

 直属の上司で赤瀬花きの御曹司。いずれは社長となる彼と話すのは、最初こそとても緊張した。
 だが赤瀬が気さくに話しかけてくれるおかげで、今では緊張せずに話せるようになっている。
 困ったことがあった時、親身になって相談に乗ってくれるところもとても頼りになる。

 赤瀬が部長で良かったと思えるくらいには、尊敬する上司だ。

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