婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。

戸惑うアネモネ



《同棲ってどういうこと!?》
「雛乃……声大きい」
《ごめん、つい。婚約破棄からなんでそんなことになったの?》
「実は……」


 昼休み、オフィスタワーに入っているカフェでランチしながら雛乃に「紅真くんと同棲することになった」とメッセージを送ったら、即座に電話がかかってきた。


「――というわけで、婚約破棄は絶対しないって言われちゃって」
《やば! てかそこからの同棲ってかなり進展早くない?》


 あの後ホテルから自宅に帰り、紅真は菜花の両親に挨拶した。菜花を朝帰りさせてしまったことを謝罪した上で、同棲させて欲しいと申し出た。
 これに両親は大喜び。


「ついに籍を入れるか!」
「やだわ、お父さん。まだ気が早いわよ。最近は同棲してから結婚するものなのよ」
「そうか、いやでもめでたい。住む場所なら私が手配しよう。知り合いに良い不動産屋がいるんだ」


 杉石不動産という大手の不動産会社の社長と懇意にしている藤夫は、すぐに社長に連絡した。
 社長は二つ返事ですぐに良い物件を探してくれると言ってくれたらしい。


「うちの両親あるあるだけど、ほんと他人(ひと)の話聞かなくて……口挟む暇もなく同棲することに」
《大変だね……紅真さんはなんて?》
「お父さんにお任せします、って」
《そうなんだ。まあ良かったじゃない》
「良いの!? 私OKしたつもりないんだけど!?」

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