婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。


 紅真は車から降りると、菜花に向かって手を差し伸べた。その手を取ると、紅真はゆっくり菜花の手を引いてエスコートしてくれる。
 それだけでドキドキしてしまう。


「どう? 広いでしょ」
「ほんとだ……!」


 外装に比べて内装はとても綺麗で広い。
 天井は高く、吹き抜けになっており開放感がある。大きな窓がいくつもあり、陽当たりも良さそうだ。


「昼間は自然光が入ってきそうだね」
「うん、正にそう。周りは自然も多いし落ち着くなと思って」
「すごくいいと思う。紅真くんがお花を生ける時も広くて良さそうだね。ここにお花を飾ったら綺麗だろうなぁ」


 部屋の中で花を生ける紅真を想像するだけでときめきが止まらない。
 キッチンもかなり広々としているし、各部屋収納スペースが多いところも魅力的だ。


(どうしよう、こんなお家で紅真くんと一緒に生活できたら幸せだし、もう新婚みたい……)


 部屋を見て回る度に、この部屋にはどんなお花を飾ろうと妄想してしまう。
 観葉植物を飾っても素敵だな、と思った。


「観葉植物を飾っても良いよね」


 菜花が思っていたことを紅真が口にしたのでびっくりする。


「私も同じこと思ってた! あとね、どんなお花を飾ったらいいかなぁって考えてたの」
「何でも良いと思うよ。バラとかガーベラとか」
「いいね! すごく素敵!」

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