婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。


 紅真が得意なのは生け花だけではない。
 フラワーアレンジメントもかなり得意で、結婚式の装飾の花を担当することもある。この前はとある芸能人の結婚式のフラワーアレンジメントを担当し、ちょっとした話題になっていた。

 玄関の花はオレンジやイエローといった明るくて温かみのある色が中心だった。
 オレンジのアネモネ、オレンジやイエローのカーネーション、イエローのバラ、そして真っ赤な千日紅が差し色となる。
 バスケットにイエローのリボンを結べば、あっという間に見ているだけで元気がもらえそうなビタミンカラーのアレンジメントが完成した。

 紅真が花一本一本手に取り、真剣に選びながら作り上げている姿を見て、菜花は思わず見惚れてしまう。


(やっぱりお花と向き合っている時の紅真くんが一番カッコいいな……)


 真剣な横顔がとてもカッコよくて、それでいて美しいと表現したくもなる。
 花の美しさ、その花を手に取る紅真の指先も美しく、また紅真自身も美しい。それは見た目だけではなく、花と向き合う心そのものが美しいと感じる。

 紅真と初めて会った時から、花を生ける姿に一番ときめくのは変わらない。
 そして出来上がった作品を見て、思わず涙が込み上げてきそうになるくらい感動してしまう。

 仕事で沢山の生け花やフラワーアレンジメントに触れることになっても、こんなに心を動かされるのは紅真だけだ。

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