婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
本当にこの人はなんてスマートなのだろうと思った。
確かに今更ながら、かすみや菊川がカッコいいと騒ぐ気持ちがわかる。
「部長の彼女になれる女性は、幸せですね」
つい思ったことがポロッと出てしまった。
赤瀬は驚いて目を見開く。
「なんだ急に」
「あ、すみません。何となくそう思ったので」
「唐突だな」
「だって優しくて気遣いができてスマートで、完璧じゃないですか。きっと彼女のことも大事にされるんだろうなと思って」
そう言ってからハッとした。
「すみません、プライベートに立ち入るようなこと、失礼ですよね」
「別に構わないけど、相変わらず真面目だな」
赤瀬はくっくっとおかしそうに笑っていた。
やっぱりこの人優しいな、と菜花は思う。
「そもそも今はまだ就業時間じゃない。雑談しながらくらいがちょうどいいだろう」
「部長ってすごく甘やかしてくれそうですよね」
「そう見えるか? まあ、間違ってはないな。好きな女性は甘やかしたい」
今の台詞を全女子社員に聞かせたら、卒倒するだろうなと思った。
「部長って、どんな女性が好きなんですか?」
缶コーヒーを飲みながら、赤瀬の優しさに甘えて尋ねてみた。
「そうだな、何事にも真面目で一生懸命な人かな。あとは笑顔が可愛い人」
「結構具体的ですね。もしかして、好きな人います?」
「ご想像にお任せする」