婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
* * *
夕方くらいにスマホを確認してみると、紅真からのメッセージが届いていた。
思わずドキッとした。深呼吸してからメッセージを開くと、たった一言だけこうあった。
「菜花ごめん、会って話がしたい」
紅真らしい不器用なメッセージだなと思った。
メッセージでは言わず、直接話したいというのが紅真らしい。
なんて返そうか迷ったが、短く「わかりました」とだけ返した。
それだけで心臓がバクバクしてしまう。
「春海さん、今日の飲み会来ますよね?」
同僚の男性社員に声をかけられ、菜花は慌てる。
「えっ!? 今日でしたっけ!?」
「そうですよ。企画部の飲み会!」
完全にスケジュールに入れ忘れていて失念していた。
「すみません、急遽予定ができてしまいまして……」
「えー、そうなんですか? せっかく部長も来られるのに!」
「部長には謝っておきます……!」
「なんで謝る必要があるんだ?」
ちょうど通りかかった赤瀬が怪訝そうに尋ねる。
「別に強制参加じゃないぞ。各自の予定を優先すればいい」
「部長……」
「というより、俺も行けそうにないんだ」
すると周りにいた社員(主に女子)が一斉に反応する。
「えぇー!? 部長来れないんですか!?」
「悪い、急遽社長と面会があってな。俺抜きで楽しんでくれ」
「そんな~。残念です~」