婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
やがて落ち着いた菜花の頬を撫で、唇をなぞる紅真。
菜花がゆっくりと目を閉じたのを合図に、二人の唇が重なり合う。
二度目のキスは触れ合うだけだが、優しくて多幸感に満ち溢れていた。
唇が離れてもしばらくぼうっと余韻に浸っていた菜花だが、急にヒョイっと横抱きにされる。
「えっ!?」と戸惑いながら、そのまま紅真の寝室に運ばれた。
優しくベッドの上に寝かし菜花を見下ろす紅真は、昂ったような熱を孕んでいた。
「こ、紅真くん……」
「菜花が欲しい」
「っ!」
「ダメかな?」
物欲しそうに、切なげに菜花の頬を撫でる。
「こ、紅真くんはその、こういうことに興味ないのかと思ってた……」
「どうして?」
「寝室は別にしようって言ったから……」
「それは、ちゃんと菜花に好きになってもらうまではケジメつけようと思ってたからだよ。本当は菜花が欲しくてたまらなかった」
「……っ、紅真くん……」
「菜花の全てを僕にください」
高まる緊張とともに言いようのない高揚感が菜花の全身を疼かせる。
「はい」と答えると、紅真は優しく微笑んで再び口付けを落とした。
「んっ」
先程とは違い、舌を絡ませ合う濃厚な口付けだった。
でも初めての時のような荒々しさはない。ゆっくりじっくり愛でるように、とろとろに蕩けさせられてしまう。