冷徹騎士団長が媚薬を盛られて大変なことになった話
 キッパリとしたユリハの言葉に、騎士たちが頭を下げる。

 そうして彼女は、彼らを医務室から出て行かせた。
 こうなればあとはもうユリハたち医官の領分であるし、高潔で責任感の強い“彼”は、部下たちに自身のこんな姿を見せることを良しとしないだろうと思ったから。

 騎士たちはベッドの上で未だ苦しげにしている上司に心配そうな視線を送りつつ、ユリハの「もし途中で医官の誰かに会ったら早めに医務室に戻るよう伝えて欲しい」との申し出にうなずき、部屋を出ていった。

 他に誰もいなくなった室内で、さて、とユリハは改めて向き合うべき患者に目を向ける。

 呼吸の乱れ。発汗。肌が火照っていて顔色はいい。
 咳き込む様子や嘔吐はなし。副団長の彼が言っていたように、盛られたのは興奮作用のある薬物でほぼ間違いないだろう。


「すみませんマクリーンさま、触ります」


 とりあえず、衣服の締めつけを緩めなければ。ひとこと断ってから、上着のボタンを手早く外した。

 中に着ているシャツのボタンも、すべて開けてしまう。鍛えられた胸板や腹筋がシャツの隙間から見えて思わず手が止まりそうになるが、なんとかやり遂げた。

 問題はズボンのベルトである。
 その下の、なんだか()()()()()()()()ように見える部分を極力視界に入れないよう、しかし急いで緩めて外した。

 これは医療行為であるのに、相手が彼だというだけで情けなくも手が震える。
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