冷徹騎士団長が媚薬を盛られて大変なことになった話
「解毒薬を……調合してきます。お辛いでしょうが、少しお待ちください」


 そう言って立ち去ろうとしたユリハだったが、不意に左腕をがしりと掴まれ、カルテとペンを取り落としてしまった。

 振り返ると、ベッドに片肘をついてわずかに半身を起こしたラディウスが、一心にユリハを見つめている。
 掴まれた彼の手のひらは、驚くほど熱かった。


「マクリーンさま……」
「いかないでくれ」


 切なげな声がささやいたと思ったら、引き寄せられた。

 バランスを崩したユリハは、ラディウスの上に乗り上げてしまう。
 しかし彼はそれを意に介した様子もなく、あろうことかユリハの腰を強く抱いてさらに体を密着させた。

 ユリハの心臓が、先ほどまでとは比べものにならないほど早鐘を打つ。


「ひゃ、あ、あの」
「キャンベル嬢……」


 すぐ耳もとで名を呼ばれ、ぞくんと背筋に痺れが走った。

 体から力が抜ける。それを見計らったかのように、ラディウスが自分とユリハの位置をくるりと入れ替えた。

 ベッドに仰向けになったユリハを、ラディウスはうっとりとした表情で上から見下ろしている。


「ああ、本当に小さくて……かわいいな、きみは」


 言いながら彼がつつっと頬を撫でるから、ユリハは真っ赤になって硬直する。
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