冷徹騎士団長が媚薬を盛られて大変なことになった話
「たいへん、大変です……早く、解毒薬を……」
「いかないでくれユリハ。俺はもう、我慢できない」


 そう言ってラディウスが、ユリハの白い制服から覗く首筋にちゅ、と唇をつける。

 だから、その衝動を抑えるための薬を飲ませたいのに……!
 しかし媚薬を盛られていないはずのユリハの頭もくらくらしてきて、体に力も入らなくて、思うように抵抗できない。


「あ、」
「ユリハは、細くてやわらかいな……壊さないように、しないと」


 なんだかちょっと怖いことをつぶやきながら、ラディウスの手がユリハの制服のボタンをぷちぷちと外していく。

 解放された左手で彼の肩を押してみても、びくともしなかった。まるで筋肉の塊だ。


「あ、マクリーンさま、だめです、だめ……」


 ユリハの、誰にも荒らされたことのない新雪の肌に、ラディウスの唇が吸い付いて赤い痕を散らしていく。

 ちくりちくりとしたその痛みが、けれどユリハにはどうしようもなく甘美だった。


「ユリハ、かわいい……好きだ、かわいい、好きだ」


 まるでうわ言のように繰り返す彼の言葉ひとつひとつに、ユリハの心はひどく揺さぶられる。 

 彼のそれが、薬によって引き起こされた一時の欲望でも──このまま、流されてしまいたい。

 密着した下半身に、ずっと何か硬いものが当たっている。
 彼は本気だ。たまたま近くにいただけのユリハを、抱くつもりだ。


「愛している」


 そんなささやきまで落ちてきて、ときめきのあまり死んでしまうかと思った。

 ああ、もう、この記憶だけで──充分、幸せだ。
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