時を超えたラブストーリー

鼻血ブー

とうとう田中由美の研修も終了となる。この日は朝から龍太郎の姿はなかった。龍太郎は部屋で小説を書いていた。その小説のストーリーは見出し「走馬灯で完結した」
 小説を書き終えた。時間を忘れていた龍太郎は時計を覗くとお昼を回っている。急いで、洒落た服に着替え。デイケア室に向かった。まだ由美達は最後の実習で研修生の企画したプログラムを披露していた・龍太郎は最後の実習に間に合った。龍太郎の顔を見た由美は安堵した。
 由美達が企画したのは。ちぎり絵を貼った灯篭作りである。龍太郎も参加した。ぎこちない手で完成させる。プログラムが終了すると。龍太郎は由美達を見送った。そして龍太郎は記念に。徹夜で書いた小説を由美に渡した。由美は、辛い時にあった時の励みにしますと受け取った。
 夕食を済ませた龍太郎は喫煙室のあるベンチシートに座り煙草をプカプカ吸っていると、その視界に由美の姿が。
「どうしたんだい」
「お父さんを待ってるんです」
「じゃ。まだ時間があるね」自販機から珈琲を買って一緒に飲んだ。
「相馬さん。お爺ちゃんみたい」
「私は、お爺ちゃんを知らないんです」
「私は、二度も成人式を迎えてるからね」
「よかったら今度。川口学のライブを見に行きませんか」龍太郎は、「こんなお爺ちゃんでいいのかい」
「いいですよ」
「それじゃ、元気で。今度逢えるのを楽しみにしてるよ」
「おーい誰か」同行した今田君が職員を呼んだ。
「相馬さんが鼻血を出して倒れています。そこへ駆けつけたのは若いワーカー小池さんである。カーテンを開け。アダルトコーナーの扉を開けた。小池さんにとっても初めての世界であった。小池さんの鼻も痛くなり。鼻血を出そうかと寸前になったが。看護師の取手君が応急処置をして小池さんはコーナーから抜け出る事が出来た。
 龍太郎は自慰と言うものはあまり興味がなかった。精神薬のおかげである。性欲が衰退する作用があった。精神薬を服用すると。副作用が両極端に出現するらしいと患者の間では広まっていた。送迎者で横たわっていると小池さんがやって来た。龍太郎は照れ臭そうに笑みをこぼしたのでった。
 そんな出来事があった。退院支援プログラムを終え。ホームに戻った。龍太郎はやがて還暦を迎えるというのに。身体がカッカと燃えてくる。下半身がムズムズしてくる。頭の中には実習生の由美のピチピチした肉体が頭の中で踊り狂う。龍太郎はまだ夕日が沈まないが布団を敷き。潜り込んだ。
「龍太郎は。夢の中で由美を抱いた」
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