積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私は大人しく諒の言葉に従って、再び身体を横たえた。頭がくらくらする。掛布団を胸まで引き上げて、暗い天井を見上げながら記憶を辿ろうと試みた。

日付はもう変わった?それともまだ今日?

将司と別れ話をし、その後居酒屋で飲み、飲み足りないからと凜の店に行ったところまでははっきりと覚えている。ろれつの回らない状態になって、お酒のグラスを凜に取り上げられたことも記憶にある。それから諒が迎えに来て、「よいしょ」と言う掛け声までは聞いた。それから……。

私はギュッと目を閉じた。

諒と寝てしまった――。

夢であってほしいと思った。いったい何がどうしたらこんなことになってしまうのかと、信じられなかった。ぽっかりと抜けている記憶をなんとか手繰り寄せようとして、ぐるぐると考えを巡らせていると、諒がペットボトルを持って戻って来た。

「ほら、水。起きられるか?」

「あ、ありがとう……」

これ以上ないほど、気まずい気分だ。私はぼそぼそと礼を言うと、毛布を巻きつけたまま体を起こしてペットボトルを受け取った。ひんやりとした水が一口一口喉を伝い落ちていくごとに、すべてではないけれど記憶の断片、というよりは感覚のようなものが、少しだけ浮かび上がって来た。心臓がどくんどくんと早鐘を打ち出す。ひとまず一人になって一度落ち着かなくては……。

「あ、あの、ちょっとトイレを借りるわ」

「どうぞ」
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