積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私は窓辺にペットボトルを置き、ベッドから下りた。床に脱ぎ捨てた状態になっていたショーツを見つけてそれを履く。ブラジャーが見当たらず、仕方なしに上半身は腕で隠したままトイレに向かった。

トイレを出ると洗面所に足を踏み入れた。鏡に自分の顔を映してみてギョッとする。もともとメイクは薄いから、ひどいことにはなっていなかったが、瞼が……。

「腫れてる……」

大学時代にはよく遊びに来た幼馴染の部屋だ。勝手をよく知る洗面所、作り付けの棚には、やはり当時と変わらずタオルが入っていた。それを適当に取り出した私はざっと顔を洗った。

これは持ち帰って洗えばいいや。

少し気分がすっきりしたと同時に、全身から血の気が失せて行く。文字通り、私は頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。

どうしよう……。

洗面所のドアの向こう側から諒の声が聞こえた。

「瑞月?大丈夫か?」

戻ってくるのが遅いからと心配してくれたのだろう。

私は慌てて返事をした。

「だ、大丈夫。今、出るから」

「そうか。早く戻って来いよ。話がある。あと、俺の部屋着、トレーナーとか置いといたから使って」

「う、うん、ありがとう……」

諒の足音がだんだんと小さくなっていく。

話というのは、やっぱり今夜のことだよね。説明する、って言ってたもんね……。

恐る恐る廊下に顔を出した私は、諒が言っていた部屋着を見つけて身に着けた。トレーナーもスウェットパンツも大きくてぶかぶかだったが、とりあえず借りるものだから仕方がない。
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