積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
胃が痛み出しそうな緊張感に全身を強張らせながら、私は諒が待っているはずのリビングに足を向けた。しかし、部屋は暗かった。

「あれ?」

私はうろたえた。

これは寝室に戻れということ?

先ほどまでの諒とのことを思い出して、私はごくりと生唾を飲み込んだ。しかし、またそんなことになるわけがないとすぐに思い直し、緊張しながら諒の寝室に向かった。

ノックをしてからそろりとドアを開けて、中の様子を伺った。部屋は間接照明だけの、薄暗いままだ。

奥の方から諒の声が私を呼ぶ。

「瑞月、こっちに来い」

拒否することは許されないような強い口調で諒は言い、自分の隣を指し示した。

「は、はい……」

私は少しずつ諒の方へ近づいて行った。その隣から離れてベッドの端の方に腰を下ろす。

部屋着姿の諒は腕を組んでいたが、私が座ったことを確かめるとその腕を解き、苦々しい声を出した。

「さて。記憶は少し蘇ってきたかな?」

「えぇと……具体的なものは、ちょっと……」

「よいしょ」の掛け声からこっち、やっぱり思い出せない。覚えているのは、抱かれていた時の感触だけ。

私は膝の上でギュッとこぶしを握った。間接照明に照らされた諒の顔を見た時から、頭の中ではただ一つの言葉がリフレインしている。

まずい。まずい。まずい。

「瑞月、今、マズイって思ってるよな」
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