積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「そう思いたい気持ちは分かるが、噓じゃない。俺が無理やり抱いたわけじゃない。お前の方から求めてきたんだよ」

「やだっ、そんな風に言わないでっ」

私は耳を塞いだ。諒が嘘を言っているようには思えなかったけれど、まさか自分が……と信じられない。私がそんなことをしてしまう人間だったなんて、とショックが大きすぎる。それに、諒はこの責任を取れと言うけれど、女の私に取れる責任などあるのだろうか。でも、それなら……。

私はそろそろと手を下ろして、諒の顔色を伺いながら言った。

「あの、責任の話、ですけど。一応ですね、最後まで致してしまったみたいなので、これで完了ということになるのでは……?」

私の言葉は届いているはずだが、諒は考え込むように無言で宙を見ている。

もしかして、このまま見逃してくれたりはしないだろうかと、私は淡い期待を持った。諒の様子を伺いながら、じりじりと距離を取る。

「あの、諒ちゃん。確認なんですけど。今夜のことは、もちろん内緒にしておいていただけますよね……?」

「内緒って、瑞月と寝たってこと?」

ひと呼吸ほどおいてから、諒はようやく私に顔を向けた。

「だから、どうしてそういう直接的な言い方するの……」

私は恥ずかしくなって目を逸らした。

そんな私を見てくすりと笑う。

「俺には付き合っている人はいないから、そういう意味ではバレたところでまったく問題ないんだけど」
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