積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「でもほら、例えば凛ちゃんとか、栞とか……」

「言わないよ。そもそも言いふらすようなことじゃないだろ。お前がバラしてほしけりゃ言うけどさ」

「いえ、ぜひとも内緒にしてください。私ももちろん誰にも言わないから。ということで、私はそろそろ帰りますので……」

私は床に足をつけて、ベッドから降りようとした。その途端諒に腕を捉えられて、ベッドの上に引き戻された。勢い余って仰向けに倒れた私の顔を、諒が上から覗き込む。

「なぁ、瑞月。お前、そんなに酒が強いわけじゃなかったよな?どうしてあんなになるまで飲んだんだ?凛も驚いてたぞ」

「それは……」

私は顔を背けた。

しかし、諒は表情を読むかのように私の顔をじっと見ている。そのうち何事かに思い至ったらしい。そっと見上げた諒の顔に、納得したような表情が浮かんでいた。

「ははぁ……。別れたのか。この前の栞の結婚式の時に言っていた相手か?もしかして、浮気でもされたか?それとも、二股でもかけられてた?」

「っ……」

私は下唇を噛んだ。

「噛むの、やめろ」

「放っておいて……」

すると諒は目元を緩めて、私の唇に指を這わせた。

「瑞月って、分かりやすい所は昔っから変わらないよなぁ。思っていることがなんでも顔に出る。だいたいさ、栞の結婚式の時にはあんなに幸せそうな顔していたのが、今夜はこんな状態じゃあな。もしかしたら……、って思われても仕方ないだろう。そういや凜も、予想はついてる、なんてこと言ってたな」
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