積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「こんな感じで、未遂というか、まだ注意っていうレベルかな。例えばさ、学生時代の時の人みたいに勢いよく直撃でもしてきてくれたら、そういうのは迷惑だってはっきり言えるんだけど。どうもそういうタイプじゃなさそうだからな」

淡々と話す諒の隣で、私は深々と息を吐いた。

「諒ちゃんって、女難の相でもあるのかしら……」

「女難?……あぁ、それはあるかもな。今夜は酔っぱらった女の世話を焼く羽目になって、その上襲われたわけだからな」

そう言って諒は横目で私をちらっと見た。

私は首をすくめて話を元に戻す。

「と、とにかく。諒ちゃんが不快だと思うならやっぱり、派遣会社にも言っておいた方がいいんじゃないかしら。いわゆる立ち入り禁止の場所にも入ったっていうならなおさら」

諒はうぅんと唸る。

「その時に一応は医局長や師長には相談したから、たぶん何らかの形で本人には伝わってると思う。それに、不快っていうのは個人的な感情だからな。それ以外は実質的な被害は今のところないし、仕事はできる人らしくて、管理局の人には重宝がられているみたいなんだよな」

「なるほど……」

「だからさ、消極的な方法だけど、これ以上面倒なことが起きる前に、前みたいに彼女がいるってことにすれば、って思ったんだ。こんなことを頼めるのは瑞月しかいないし」

そう言って諒は私との距離を縮める。

「そんなの……。今度こそ本当に『そういう人』を見つけた方が早いんじゃないの?前にも言ったけど、諒ちゃんならすぐに見つかるって」

私はそう言いながら、諒から離れる。

「そう簡単に『そういう人』が見つかれば苦労しないんだよ」

「それはそうかもしれないけど……。理想が高すぎるんじゃないの?」

腑に落ちない顔で首を傾げた時、諒が前触れもなくキスをしてきた。
< 114 / 242 >

この作品をシェア

pagetop