【改訂版】積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は想いを秘め続けていた〜

第20話

　私の入院生活は予定より少しだけ早く終了した。
　入院中、新たに何らかの症状が出ることはなかったし、痛みはまだあるものの、思っていたよりも早く動けるようになったためだ。
　自分の部屋に戻ってからは、三日ほど母が一緒にいてくれた。自分でやると言う私を止めては、細々と世話を焼いてくれた。

「今はこんな時でもないと、瑞月のこと、お世話できないからね」

　そう言う母は少しだけ寂しそうで、けれど楽しそうにも見えた。その母も今日の昼過ぎに家に帰って行ったが、帰り際に眉根を寄せながらこう言った。

「ねぇ、瑞月。またこんなことがあったらと思うと、お母さん、心配でたまらないのよ。栞ちゃんたちが近くにいてくれるって言っても、一緒に住んでいるわけじゃないでしょ？今、特にお付き合いしている人がいないのなら、こっちに帰って来てもいいんじゃないの？」
「その話は、また今度……」
「まぁね、あなたの都合もあるだろうし、仕事だってすぐにやめられるわけではないだろうから。ただ、そういうことも少し考えておいてね。うちに帰って来たって働けるでしょ？なんならお見合いしたっていいんだし」

　私は曖昧に笑うにとどめた。母の言葉を受け入れるようなことは言いたくなかったし、諒と付き合っていることもなんとなく言い出しにくかった。
　その夜、栞が訪ねてきた。手には重たそうなマイバッグをぶら下げている。色々と買い込んできてくれたようだ。

「瑞月、その後具合はどう？」
「ありがとう。だいぶ、楽になったよ」