積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
俺は先輩にもう一度頭を下げて挨拶すると、急ぎ足で病院の外に出て自分の車に向かった。

凜の電話によると、瑞月は泥酔しているということだったから、恐らくは自力では歩けない状態なのだろう。背負うか抱きかかえるかして運ぶことが予想されたから、できるだけ近い場所に車を停めたいと思った。ラッキーなことに、凜の店から最も近い場所にあるパーキングメーターが空いていた。好都合とばかりにそこに駐車する。

凜の店に入ると、いつもながら派手派手しい衣装と化粧で着飾った一応の『美女』たちが、低い声で歓迎の言葉を口にする。

「あらぁ、センセ、いらっしゃい」

「いつ見てもイイ男だこと」

そう頻繁に来るわけではないが、凛の友達ということもあってか、彼女たちからは常連扱いされている。

凛が愉快そうに笑って、彼女たちにさらりと告げる。

「彼は今日、飲みに来たんじゃないのよ。人を迎えに来てもらったの」

「あぁ、その子ね。なんなんですか?その酔っ払いとセンセの関係」

「野暮なことは言わないの」

「あらまぁ、なんだか妬けるんですけど」

俺は賑やかな外野に少々呆れながら、凛が手招きするカウンターまで歩いて行った。

その片隅に、ぐずぐずと泣いている瑞月がいた。

「おいおい、なんだよ、これ……」

俺は呆れ顔で瑞月の横顔を眺めた。

「いったいどうしたっていうんだ」
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