積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「ここに来た時にはもう、どこかで飲んできたみたいで、酔っぱらっていたのよ。電話でちらっと言ったけど、彼氏とダメになってやけ酒ってとこなんじゃないかしら。でもほんと、変なのにふらふら着いて行かなくて良かった。瑞月ちゃんが来た時は、まだ開店したばかりで暇だったから良かったんだけど、そろそろお客さんが入り出す時間だから、どうしたものかと困ってたの。瑞月ちゃんがこんな状態になるのを見たのは初めてで、心配は心配なんだけど、お店を閉めるわけにもいかないし。かと言って、わたしの部屋に連れて帰ると言っても、同居人がいるからねぇ。栞ちゃんもつかまらなかったから、諒に電話したわけ。ねぇ、なんとかして連れて帰ってやってよ」

「なんとかって……」

この状態の瑞月を連れて帰るのはひと苦労だな、と思って俺は顔をしかめた。その時、目の端で捉えていた瑞月が急にテーブルの上に突っ伏した。

「おい、ついに潰れたみたいなんだけど」

「あらあらあら……」

凜も苦笑している。

「車で来てるんでしょ?」

俺はため息をついた。

「まったく仕方ないなぁ……」

「お願いできるわよね?」

「あぁ、分かったよ。……それじゃあ、連れてくから」

「ほら、瑞月ちゃん、帰るわよ。諒が送ってくれるって」

凛が瑞月に声をかけたが、反応はない。

「寝たってか」

「そのようね」
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