積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「凛、手伝ってくれよ。すぐそこに車停めたんだ。瑞月の荷物を持って、そこまで一緒に来てくれないか」

「そうね。これは一人では大変だわね」

「着く頃にはさすがに起きるだろ」

俺はそう言いながら、凜に手伝ってもらって瑞月を背中に背負った。二人がかりで瑞月を車に乗せる。

「じゃ、瑞月ちゃんのこと、頼んだわよ」

「あぁ。じゃあ、またな」

俺は凜に軽く手を挙げると、車を出した。瑞月のマンションに向かって車を走らせながら考える。

瑞月も俺と同じように、今も学生時代と同じ部屋に住んでいる。彼女の部屋は三階で、エレベーターがない。瑞月が起きればいいけれど、もし、起きなかったら?または自力で歩けないほどの酔いっぷりだったら?俺は苦行を強いられることになるのか?

そう考えたら気が滅入りそうになり、それならばと思いつく。初めからエレベーターのある俺の部屋に連れて行った方が早い。部屋も、予備の布団もある。なんなら瑞月は俺のベッドに寝かせて、俺が他の部屋で寝てもいい。

俺はそう決めて、瑞月の部屋に向かっていた車の行く先を、自分のマンションに変更した。

結局瑞月は目を覚まさなかった。

気持ちよさそうに寝ているようだし、起こすのもかわいそうかーー。

仕方ないと諦めた俺は、手伝ってくれる人がいない今、なんとか車から瑞月を降ろして抱きかかえた。自分たちの荷物は後回しだ。

瑞月は小柄だけれど、酔い潰れてくたりと寝てしまっているから、思った以上に重たく感じた。

やっぱりこっちにして正解だった。

俺はエレベーターの有り難みをひしひしと感じながら、瑞月を連れて乗り込んだ。
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