積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
とりあえず、俺のベッドでいいか――。

あとひと息だ、と自分を励まして瑞月を寝室に運んだ。ようやくベッドにたどり着き、俺は彼女を横たえて毛布を掛けてやった。

目が覚めた時に驚かないようにと、ベッドサイドの小さな灯りだけをつけて、部屋の電気を消した。

「やれやれ」

ジャケットを脱ぎながらぼやいた時だ。

「ん……」

瑞月が寝返りを打った。

目を覚ますのかと思い、ベッドの端に腰かけて彼女の顔をそっと覗き込んでみた。

「寝てるな……」

俺は瑞月の寝顔に向かってつぶやいた。

「お前がこんな状態になったのは、例の彼氏のせいなのか」

俺は指先で瑞月の頬にそっと触れる。

すると、目を覚まさないと思っていたはずの瑞月が、急にぱちりと目を開いた。

俺は慌てて手を引いて、そっと彼女の顔を覗き込んだ。

「大丈夫か」

しかし、瑞月は俺の声には答えずむくりと体を起こし、いきなり俺の首に腕を絡めた。そのままぐいっと体重をかけて、俺を自分の体の上に引き倒す。

「おいっ、瑞月っ」

俺は慌てて体を起こそうとした。しかし、瑞月は思いのほか強い力で俺にしがみついて言った。

「キスして」

「なっ……!」

俺は絶句した。寝ぼけて勘違いしているのだと思った。

「俺はお前の彼氏じゃないぞ」

しかし、瑞月の耳に俺の言葉は届いていないようだった。

嫌々をするように首を振り、その腕に力を入れた瑞月は首を伸ばして、自分から俺にキスした。
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