【改訂版】積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は想いを秘め続けていた〜
 仕事に復帰してから、さらに三週間ほどが過ぎた。
 初めのうちは同僚たちの気遣いのおかげもあり、比較的のんびりと、それこそリハビリのようなつもり仕事をし、定時で退社していた。しかし今ではもう、ほとんど以前のように働けるようになっていて、その日は久しぶりに残業しての帰宅となった。
 マンションに着くと、まずはエントランスを入った所にある郵便受けを確認する。今日もまた大量のチラシが入っていた。やれやれと思いながらそれらを取り出し、部屋に戻る。
 まれにそのチラシたちの間に、公共料金の検針票や郵便物が紛れていることもあるから、ひと通り目を通す。その中に、表書きのない真っ白な封筒があった。
 ダイレクトメールかと思って裏を返してみたが、何の記載も印刷もない。以前、近所に新しくできた店の、チラシだとか割引券などが入った封筒が入っていたことがあった。これもまたそういう類のものかと思い、糊付けされていない封を開いてみた。折り畳まれて中に入っていた紙を引っ張り出し、広げた途端にどきりとした。

「何よ、これ……」

 真っ白い紙の真ん中に、太めの黒い文字が並んでいた。

『久保田さんにあなたは似合わない』

「久保田さん、って。諒ちゃんのことかな……」

 そうだとすれば、これを書いたのは諒を知っている人だ。文面からは、私と諒が交際していることを知っていて、そのことを快く思っていない気持ちが読み取れる。そしておそらく、諒に思いを寄せている人物。
 私は文面をじっと見つめた。
< 125 / 166 >

この作品をシェア

pagetop