積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜

EP-14

忘れたいのに忘れられないあの泥酔事件から数日後。私はあの夜迷惑をかけた凜のもとを訪ねていた。彼の好物のシュークリームを手土産に謝りに来たのだ。

開店前の店内に、まだ他のオネエサンたちの姿はない。

「凛ちゃん、ほんっとうに、この間はごめんなさいっ……。あの、これ、お詫びです。他の皆さんの分もあるので、食べてください」

凜は私の従兄だが、紆余曲折あった末、今ではオネエサマ系のスナックを経営している。なかなか盛況らしく、時折地元紙のワンコーナーにも紹介されていたりもする。ちなみに伯父たちは複雑ながらも、諦め認め、応援しているようだ。

私たちが仲良しなのは相変わらずだったが、この前のことはさすがに凜も怒っているに違いないだろうと、ここに来てからの私は背を丸めて小さくなっていた。

しかし凜は呆れたように笑っただけで、嬉しそうにシュークリームの入った箱を受け取った。

「ありがとうね。後でみんなで頂くわね。……さて、それで?あの日は結局なんだったの?酔っぱらいなんて普段から見慣れてはいるけど、あんな瑞月ちゃんを見たのは初めてだったから、さすがに驚いちゃった」

「本当に、申し訳ありませんでした……」

私はテーブルに額がつきそうになるくらい深々と頭を下げた。

凛は笑い、私の頭を撫でた。
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