積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「もういいわよ。これに懲りて今後は気をつけなさい。それよりも聞きたいのは理由よ。あの飲み方からして予想はついているけどね。でも、言いにくいことならあえては聞かないわ」

私はのろのろと顔を上げた。

「言いにくいというか……。諒ちゃんからは、あの後何も聞いていない?」

「諒?別に何も聞いていないわ。あの日だいぶ遅くなってから、無事に帰ったから、っていう簡単な連絡をもらっただけよ」

「そうなのね……」

私はほっとする。私が泥酔した理由は然り、あの夜私と諒の間に起こったことも、凜は知らないということだ。

「あの日別れたばかりだったの。付き合っていた人と」

私はぼそっと言った。

「あらまぁ、やっぱり?」

凜は綺麗なまつげに縁どられた目を見開いた。

「あの時の瑞月ちゃんを見て、あれって思ったのよね。栞ちゃんの二次会で会った時、すごく幸せそうな顔してたのに、って。確か、あれからまだ二か月くらいしかたっていないわよね?」

「……浮気されたの」

凜は目を瞬かせた。

「あらあらあら。よく聞く話ではあるけれど……。その男、どうしてそんなことしちゃったのかしらねぇ。こんなに可愛い彼女がいるっていうのに。でもさ、いいお勉強になったとでも思って、早く忘れちゃいなさい。男はその人だけじゃないし、いつまでも引きずって、貴重な時間を無駄にする必要はないんだからね。それにしてもその男、ほんと、おばかさんよね。瑞月ちゃんを裏切るようなことしちゃって。こんなにいい子は滅多にいないっていうのに、もったいないことをしたものね」
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