積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「ねぇ、瑞月ちゃん」

急に様子が変わり大人しくなった私を、凛は怪訝な顔でじっと見つめた。

「どうして、わたしから目をそらしているのかしら?諒と何かあった?」

笑ってごまかすか、せめてひと言だけにして答えればいいものを、焦った私は早口で否定の言葉を繰り返した。

「な、ないよないよ、何もないよ」

凛がまじまじと私を見る。

「ふぅん……?何もなかったんなら、どうしてそんなにムキになって否定するの?逆に怪しいんだけどな」

凜はしばらく私を眺めていたが、ふっと笑みを浮かべ、何かを納得したように頷いた。

「別にいいと思うわよ。行きずりはまずいと思うけど、二人は知らない仲じゃないし、もう大人なんだから。――それに、瑞月ちゃんはもう恋人と別れた、諒だって付き合っている人はいない。二股でもないし、浮気でもない。全然ありよ。わたしとしては、むしろ二人をお祝いしてあげたいくらいだわ」

「え、あの……」

恥ずかしさに冷や汗が出てきた。私と諒の間に何が起こったのかを、凛は察しているようだった。恥ずかしすぎて、言い訳がましいのを承知の上で、言わずにいられなかった。

「あのね、ここだけの話だよ。諒ちゃんに付きまとっている女の人がいるらしいの。困ってるんだって。だから、頼まれたの。私に彼女のふりをしてほしいんだって」
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