積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
凛の表情が固まった。二、三回瞬きしたかと思ったら、こめかみの辺りを抑えながら聞き返す。

「ちょっと待って。今、なんて言ったの?彼女の、フリ?」

凛はその後も何度か瞬きを繰り返したが、呆れた顔をすると深くて長いため息を吐き出した。

「……あの人は、いったい何を考えているのかしら。まったくもう……。どこまでこじらせるつもりなの?」

「何をこじらせるって?」

「うぅん、こっちの話よ」

私の問いかけをさらりと流してからも、凜はぶつぶつと意味深な言葉を並べる。

「こういうことは他人が口を出すと、もっとややこしくなるものね。もう、私は黙って見守ることにしましょ。それに物事っていうのは、どのみちなるようにしかならないと思うからね」

話を飲み込めないでいる私に、凜は微笑んだ。

「瑞月ちゃんはそのままでいいってこと」

「はぁ……?」

「今度は諒と一緒にいらっしゃい。たっぷりとからかってあげるから」

凜は何やら含みのある顔で、ふふっと笑う。

「さて、そろそろお店を開ける時間だわ。瑞月ちゃん、どうする?飲んでく?……と言っても、今日はウーロン茶しか出してあげないけど」

からかうように言われて私は赤面した。

「いえ、今日は大人しくもう帰ります……」

「そうしなさい」

くすくすと笑う凜に見送られて店を出た私は、寄り道をせずにまっすぐ帰路についた。
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