【改訂版】積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は想いを秘め続けていた〜

「ねぇ、諒ちゃん。私がこういうことに巻き込まれるのって、確か二回目だよね。恋人がモテすぎるっていうのも、困るものなんだね」
「こういうの、モテるって言うのか？迷惑でしかないんだけど」

　諒は不満げに鼻の頭にしわを寄せる。
　私はふと思いついて言った。

「例えばよ。諒ちゃんのお腹が出てたりしたらさ、こういうこともなかったのかな」

　諒は苦笑する。

「なんだ、それ。瑞月がその方が安心だって言うなら、俺はいくらでも太ってやるぜ？」
「それは嫌。健康に悪そうだもん。諒ちゃんには体に気をつけて、私よりも長生きしてほしいからね」

　諒は納得したような顔で大きく頷く。

「じゃあ、やっぱり結婚しかないな。お前が傍にいてくれるだけで、俺は心身ともに健康でいられるような気がするんだよ」
「大げさだよ」

　くすくす笑う私に、諒は宣言するように言う。

「来週実家に行ったら、『付き合ってる』ってだけじゃなくて『結婚前提だ』って言うからな。それでこっちに戻ったら、指輪も見に行くぞ」
「そんなに急がなくても、私は逃げないよ」
「もちろん分かってるよ。でも、早く瑞月との関係を確かなものにしたいんだ」

　諒の腕の中は安心できる場所。その温もりに包まれているうちに、怪文書や無言電話への恐怖心や不安は薄れて行くような気がした。