積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「俺の顔に何かついてる?」

「な、なんでもない」

「ふぅん?」

諒が何か言いたそうな顔で私を見たが、あえて気づかないふりをする。

洗面所を借りると言って、諒はしっかり手を洗ってきてからテーブルに着いた。

「チャーハン?瑞月の飯、何年ぶりかな」

しみじみとした顔でスプーンを持つと、時折箸に持ち替えながら、諒は嬉しそうな顔で食事を平らげて行く。

それを眺めていたら学生時代のことが思い出されて、ふと懐かしくなった。

またあんな風に過ごせる日が来たら楽しいだろうな――。

「ご馳走さまでした」

諒の声に我に返る。

食べ終えた諒は、満足そうな顔をして両手を合わせていた。

「瑞月の飯、やっぱりうまい。ほんと、久しぶりだったもんなぁ。腹減った、って言ってみて良かった」

私はあえて薄めにしたお茶を諒の前に置いてから訊ねた。

「でも、急にどうして?」

この前のことに縛られているのは私だけで、諒の方はまったく気にしていないだろうか。だから、ご飯を食べさせてだなんて、能天気な電話をかけてよこしたのか――?

そんなもやもやした感情が広がる。

諒はお茶を一口飲んでから、私の疑問に答えた。

「早速瑞月に彼女のふりをしてもらったんだよ」

「あれ、本気だったの?」

「冗談だと思ってた?」

「だって……」

諒は小さく笑みを浮かべて続ける。

「まぁ、いい。あの電話は、例の人に見せつけるためだったんだ」

そう言うと、諒は疲れたような顔で苦笑した。
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