積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「今日の帰り、たまたま先輩と一緒になったんだけど、二人して通用口を出て駐車場に向かおうとしたら、またあの人がいてさ。待ち伏せ。それで、わざとお前に電話したわけ。彼女がいるっていうアピールのつもりでね。当然先輩には冷やかされたけど、証人ってことで、むしろちょうど良かったかも」

「そうだったの。効果はあった?」

「そうだな……。電話は聞こえていたと思うから。あの内容で察して、諦めてくれたらいいんだけどさ」

そこまで聞いて、私はふと思った。

「ねぇ、それって。私がその人に直接会う機会がないなら、本当にいなくてもいいんじゃないの?その、恋人役って」

「本当にいた方が、そういう場面になった時にリアリティがあるに決まってるだろ」

「そうかもしれないけど……。いっそのこと、はっきり言ったら?昔のあの時みたいに、冷たい顔で」

「そうしたいのはやまやまだけど、これでも一応は人気商売的なところもあるからさ。あんまり冷たくもできないっていうか……」

「ふぅん。納得できるような、納得できないような……」

私は複雑な顔で諒を見てため息をついた。

「その人が早く諦めてくれるといいね」

すると、諒は拗ねたように言い出す。

「俺の彼女のふりするの、そんなに嫌?」

「そ、それは……」

目を泳がせる私に、諒はにやりと笑う。

「でもさ、そのおかげで少しは元カレのこと、忘れられたんじゃないのか?」
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