積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜

EP-16

社内恋愛はうまく行っている時はいいけれど、そうではない時は非常に面倒だ。将司と別れた今、私はそのことをひしひしと感じていた

給湯室で来客用のお茶を準備している時だった。

自分用の飲み物を作ろうとしてか、たまたまやって来た同僚が言いにくそうに、しかし興味津々な色をにじませた顔で私に訊ねた。

「ねぇ、大原さんって、確か営業部の人とお付き合いしてなかったっけ?」

またかと思った。このことを聞かれるのは、これで三人目だった。

「あぁ……。別れたんです」

「あら、そうだったんだ。最近の二人の雰囲気が今までとちょっと違うなぁなんて思ったものだから……。余計なこと聞いちゃってごめんなさいね」

申し訳なさそうな顔をする同僚に、私は笑顔を見せる。

「いえいえ、大丈夫ですよ。もう、終わったことですし」

「それなら今度、合コンある時誘うから」

「あはは、ありがとうございます」

私は笑って同僚を見送った。どっと疲労感を覚える。聞かれる度に傷つくということではなく、いちいち答えるのが面倒だなという意味で、だ。諒に指摘されたけれど、自分でも不思議なくらい、今の私にとっての将司はもうすでに思い出の彼方の存在となっていた。

来客にお茶を出し終わり、席に戻った途端に課長から呼ばれる。

「大原さん。悪いんだけど、このデータ資料、営業部の田原部長に届けてくれないか」

「はい、かしこまりました」
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