積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「どうして、いるの……」

私は後ずさった。

「話をしたくて待ってたんだ」

将司が一歩近づく。

「だからって、待ち伏せなんて……」

「仕方ないじゃないか。話をしたくても、君は取りつく島がなかった。頼むよ、少しだけ時間をくれ。部屋に上げてくれとは言わない。ここでいいから、話を聞いてくれないか」

「もう言ったはずです。あなたとやり直すつもりはないって」

私は将司から逃げるように、エントランスに入った。階段を駆け上ろうとするが、追ってきた将司に捕まってしまった。彼に引きずられるようにして外へと連れ戻された。

「やめて、離して。私の方にはもう話すことはないんだから」

将司は植え込みの影まで私を引っ張って行くと、そこで足を止めた。私の両方の肩を掴みながら言う。

「本当にもう浮気は二度としない。彼女ともちゃんと別れたんだ。お願いだ、もう一度チャンスをくれよ」

「それは無理だって言ったでしょ。あなたと元に戻るつもりはこれっぽっちもない」

「そんなこと言わないで、考え直してくれよ」

こんな人だったかしら……。好きになった彼はもっとこう、大人だと思ったのだけど。

哀願する将司を見て、私は悲しい気持ちになっていた。

「ねぇ、どうしてそんなに私にこだわるの?」

「どうしてって……。君が好きだからに決まってるだろ」

「本当にそうなのかしら?それなら、どうして浮気したの?」

「それはだから、つい……」
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