積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
どんなに話をしたところで、彼は納得しそうにないし、私の気持ちが変わることもない。不毛な会話に飽き飽きして、私は一方的に話を終わらせようとした。

「とにかく、やり直す気はありません。離して」

毅然とそう言って将司の手から逃げようとした時、私の電話が鳴った。

その音を聞いて、私の肩を掴む将司の手に力が入った。

「痛いっ」

私の声を無視して彼は言う。

「まさか、もう付き合ってる男がいたりするのか」

「いないわよ」

「でも、俺と別れてすぐの君は、たまたま遠目に見えただけでも、沈んだ顔をしているどころかむしろまた一段と綺麗になってた。だから、もうそういう相手ができたのかと……」

「仮にそうだとしても、今の私はあなたの彼女ではないんです。だから、私が誰とどうなったとしても、あなたには関係ないでしょう?」

「だけど俺は、別れることに同意してはいない」

「同意って……。結婚してたわけじゃないんだから、同意も何もないでしょ。私はもう、あなたのことが好きではないの」

「……他に好きなやつができたんだろ」

「だから、どうしてそうなるのよ」

そう反論しながら、諒の顔が頭に浮かんで私はどきりとした。

将司は私の一瞬の間に気づいて、追及してくる。

「やっぱり、そういう男ができたんだな」

「そんなんじゃないわ」

否定の言葉を口にする私の目を、将司が覗き込む。
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