積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
頭の中が混乱しそうになった時、さっき取り損ねた電話がまた鳴った。しかし今度はすぐに切れる。それからほどなくして、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

この声は……。

首を回した先に、私たちの方へ駆け寄って来る諒の姿が見えた。

「諒ちゃん……」

思わず洩れた私の声に、将司の手が緩む。

その隙に逃げた私は、諒の元へと走った。

「大丈夫だったか」

「うん……」

諒は私の肩を抱きながら、将司の前に立った。

「瑞月に何をしてた?」

将司は、突然自分の前に現れた諒に明らかに戸惑っていた。

「何もしていない。ただ話をしていただけだ。誰だか知らないが、邪魔をしないでくれ」

「話?あんな風に肩を掴んで?あんた、瑞月とはどういう関係だ?」

諒は将司をじろりとねめつけると、私を守るかのように自分の傍にぴったりと引き寄せた。

「俺は……」

言い淀む将司に、諒は人の悪そうな笑顔を向けた。

「あぁ、もしかしてあんたのことか?浮気して瑞月を傷つけた元カレっていうのは」

将司の声がかすれた。

「それは……」

「それで、元カレがここで何を?二度と浮気はしないからとでも言って、瑞月とよりでも戻そうとしてた?それで、瑞月は許すって言ってくれたのか?」

「だから、話している途中だったんだ」

「瑞月は頷かないよ」

「他人のお前が口を出すな。第一、お前こそ、彼女とはどういう関係なんだ」

諒はただくすっと笑う。
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