積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「まさか、君の新しい男なのか?俺と別れてすぐにこいつと?」

諒は私を睨みつけている将司の言葉を遮り、ため息をついた。

「その言い方、気に食わないな。勘違いしないでくれよ。俺が昔からずっと好きだった瑞月を、あんたが横からかっさらっていったっていうのが、本当は正しい言い方なんだ。瑞月には可哀そうな話だったけど、あんたが浮気してくれたおかげで、こいつはやっと俺のもとに戻って来てくれた」

「あの、諒ちゃん……」

「ごめん、瑞月。今は黙っていて」

私の肩を抱いていた諒の手に、きゅっと力が入ったのが分かった。そのままさらに抱き寄せられて、私は口を閉じた。胸の奥で鼓動がうるさいくらいに鳴っている。

今の言葉は全部、私を助けるためのただの嘘だよね――。

そうに決まっていると思ったが、途端に胸が締めつけられたように苦しくなる。

「だからあんたはもう、瑞月のことは諦めた方がいい。第一、一度離れた人の気持ちを取り戻すのはそう簡単なことじゃない。分かったら、もう二度とこいつに近づくのはやめろ。――さ、瑞月、行こう」

「え、行くって……」

「いいからおいで」

諒は私の肩を抱いたままマンションを離れる。ためらいながらも従う私を見て、彼はほっとしたように頬を緩めた。

その場を離れる時に、将司の姿がちらりと目に入った。彼はだらりと腕を垂らしたまま、そこから動かなかった。
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