積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜

EP-17

諒の車は来客用スペースに止めてあった。

彼に促されて、私は助手席に乗り込む。

ガラス越しに将司の様子をうかがうと、彼はまだその場に突っ立っていた。しかし、私が戻ることはないとようやく諦めたのか、ひどく重たげな足取りでのろのろと立ち去っていった。

将司の姿が見えなくなって、私はようやくほっとした。

「もう行ったみたい。私、部屋に戻る」

「まだその辺にいるかもしれないし、心配だからもう少し俺といろよ。そうだ、飯、喰いにいかないか?腹、減ってるだろ?メッセージ、送ったのは見てくれたか?」

「うん、見たけど……」

私はためらい、膝の上に目を落とした。想定外の出来事に直面して疲労感を覚えていたことは確かだが、それ以上に、諒が将司に向かって言ったことの意味を、ひとりでゆっくり考えてみたい気持ちになっていた。

私が落ち込んでいると思ってか、諒は気遣うように声を明るくして言う。

「なら、行こうぜ。腹を満たせば気分も変わるだろうから」

「……それもそうだね」

「よし、じゃあ、行こう」

諒はエンジンをかけて車を発進させる。

私は運転する諒を横目でちらと盗み見た。

今の私と諒の関係は、幼馴染に加えて偽の恋人同士。

諒のことは小さな頃からずっと幼馴染のお兄ちゃんとして信頼し、大好きだった。その気持ちは今も変わらないし、思いがけず体を重ねることになってしまったが、嫌いになったりはしていない。それどころか――。
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