積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私は窓の外に目を向けて、ガラスに写った諒の横顔をそっと眺めた。

あの夜以来、私は諒を「男」として意識するようになっていた。彼を好きだと思う気持ちの種類が変化したことに気がついていた。後日もう一度顔を合わせてからはもっと、諒のことを思うとどきどきした。彼の温もりを思い出して、またあの腕の中に閉じ込められたいと、再び来るとは思えないその時を想像したりした。

私は諒に恋をした。

けれど彼の本心が分からなかった。私を抱いたのは、男の本能によるものだったのかもしれないと思った。変わらず優しいのは、幼馴染としてのこれまでの延長上にあるものだと思った。後日とある理由で私の部屋に来ることになった夜、彼の態度は今までと変わらない「幼馴染の私」に接するようなものだったし、その帰り際に私に軽くキスをした時も、彼はそれを「恋人役」の一環だと言った。

私は諒の恋愛対象ではない――。

それぞれの出来事を振り返った時、そう結論づけた。自分の気持ちを隠しておこうと考えた。私の恋心を知った時、大好きな諒が離れて行ってしまわないように。

けれど将司に向けて、私を「好きだ」と言った諒の言葉に動揺した。

あれは私を助けようとして言っただけだと自分に言い聞かせてはみたが、諒の気持ちを知りたい思いは溢れ出しそうになっている。

「着いたぞ」

入り乱れる自分の感情に向き合っていた私は、諒の声で我に返った。

目的の店に到着したのだ。そこは、ログハウス風の建物のカフェレストランだった。
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