【加筆修正中】積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「どうかした?」

怪訝な顔で訊ねる私に視線をじっと当てて、諒は微笑んだ。

「今日は瑞月のこと、ちゃんと見る暇なかったなと思って、今じっくり見てる。そのワンピースも似合ってるな。可愛い」

「あ、ありがとう」

私はどきまぎして目を伏せた。

諒は私を褒める言葉をいつだって口に出して言ってくれる。

けれど、私はそういう言葉を彼に言ったことがないような気がした。心の中でそう思っても、恥ずかしくて口に出せなかった。でも、今夜は少しくらいは頑張ってみようかという気持ちになった。これも下着効果なのかどうか……。私は頬が熱くなるのを感じながら言った。

「私も今日はちゃんと諒ちゃんを見てなかったかも。白衣の諒ちゃんも素敵だったけど、スーツ姿もとっても素敵だよ。えぇと、かっこいいよ」

諒は驚いたように目を見開いた。

「瑞月にそんな風に言われたの、初めてかもしれない」

「うん。自分でもそんな気がする」

「惚れ直した?」

くすっと笑って言う諒に、私はこくんと頷いた。

「うん。惚れ直した」

「実は俺も」

諒は立ち上がって私の傍までやってくると、そっと私の鎖骨に沿って指を滑らせた。

ぞくぞくして、私は息を飲んだ。

諒は耳元で囁く。

「すぐにも抱きたいけど、ワンピースがしわになるといけないから、今はキスで我慢する」

諒は私にちゅっと口づけて、頬を赤らめている私を満足そうに見た。

「そろそろ行こうか」

諒は私の荷物を持ち玄関に向かう。来客者用の駐車場に停めていた車に乗り込み、私たちはホテルに向かった。
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