積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「そ、そういう意味で言ったわけじゃなくて……」

諒の不機嫌さの中に悲しみを感じ取り、私は口ごもった。例え諒が私に対して恋愛感情を持っていないとしても、彼が私を大切に思ってくれていることを私は知っている。そしてもちろん私にとっても大切な人。それなのに、傷つけるような言い方をしてしまったことをとても後悔した。

本当はそんなことを言いかったわけじゃない――。

「もしかして……」

沈黙する私に、諒が静かな声で問う。

「さっきの男と、よりでも戻したくなった?」

「えっ」

驚いた私は諒の方に顔を向けて、強い口調で否定した。

「それはないよ。その場にいたんだから、分かるでしょ?間違ってもそれは絶対にない」 

だって私が好きな人は目の前にいる人なんだから――。

そうは思うが口にはしない。できない。

「本当に?」

確認するかのように、諒は私の顔を覗き込む。

「本当よ」

大きく頷く私に、諒は明らかにほっとした様子を見せた。

「それならさ。もうしばらくは俺につき合ってくれよ。……なんなら、このまま俺のこと、好きになってもいいんだぜ」

それは冗談?それとも本気?真に受けた私が、あなたを好きだと言ったら、どんな顔をするのかしら――。

素直に頷いてしまいたくなったけれど、それを止めるように、私の口は嫌味混じりの言葉を吐き出す。

「その言い方、ずいぶん高飛車だよね。ドクターになって周りにチヤホヤされて、勘違いするようになっちゃった?今の諒ちゃんは自信満々だね」

それに対して、諒も軽口で返してくると思っていた。

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