積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
私の間が長かったせいか、あるいはその答えが自分の期待していたものとは違うと思ったのか。諒は私の腰に回していた腕を解いて立ち上がり、何かを吹っ切るかのような明るい声で言った。

「ごめん。答えにくかったみたいだな。今の話は忘れてくれるか。……そろそろ戻ろう」

私はとっさに諒の袖口を捉えた。

「待って!違うの」

諒は動きを止めて私を振り返り、それからゆっくりと元の位置に腰を下ろした。

「違うって何が?」

顔を覗き込まれて、私は目を伏せた。

「今はもう、諒ちゃんは男の人に見えてる」

もっといい言い方があるだろうに、これが私の精一杯の答え方だった。

諒は私の顔を両手でふわりと包み込み、静かな口調で問いかけてきた。

「それなら今、お前は俺のことをどんなふうに思ってる?好きか嫌いかで言ったらどっちだ?」

「……嫌いじゃ、ないよ」

「それは、好きっていう意味でいいのか?」

私は肯定するようにゆっくりと頷いた。

「男として俺を好きだと思ってるってこと?」

諒が私の表情を確かめるように顔を近づけた。

「うん」

諒は私をじっと見つめていた。その瞳は真剣で優しい。

「瑞月、俺は『好き』なんて言葉だけじゃ足りないくらい、お前を愛している。『偽物の恋人』なんかじゃなくて、俺の本物の恋人になってほしいんだ」

「だけど……私でいいの?私、美人でもないし、色っぽくもないよ」

自分が諒の隣に本当に立ってもいいのかと、ふと不安になって、私はそんなことを言ってしまう。
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