積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「それは……」

私は目を泳がせた。諒に抱かれた夜からだとは言いたくなかった。だってそんなのはまるで、体から始まった関係みたいで恥ずかしすぎる。

しかし私の表情から察したのだろうか。諒は意地悪そうに口角を上げて笑った。

「もしかして、もしかしなくても、あの夜?」

「え……」

慌てる私に、諒がいたずらっぽい笑みを浮かべる。

「そんなによかった?」

「そういうこと聞かないで」

表情を見られたくなくて顔を手で覆う私の耳に、諒の嬉しそうな声が聞こえる。

「俺、賭けに勝ったってわけだな」

「賭け?」

私は手をよけて、諒を見上げた。

「あぁ。あの時、お前を抱くことで、お前に嫌われるか、それこそ俺を男として見てくれるようになるか、自分に賭けたんだよ。その結果がこれってことだろ。それに、きっかけなんかどうだっていい。お前はこうして俺の腕の中にいる。俺にとってはこの現実が何よりも大切なことだから」

諒は私の唇を塞いだ。

重ね合わせた唇がずれる度に、諒の手が私の体に優しく触れる度に、私の唇からは艶やかな吐息がもれた。体の芯がじわりと熱を持ち始めて脚の間が疼き出す。

「瑞月。お願いだからもう諦めて、黙って俺に愛されてくれよ」

諒は優しく囁くと、私の首筋に口づけた。

熱か涙か、それとも両方か。私は潤んだ目で、愛おしい幼馴染みを見つめる。その背中に腕を回し彼の耳に口づけて私はそっと言った。

「諒ちゃん、大好きよ」

この夜想いを通じ合わせた私たちは、偽物ではなく本物の恋人同士となった。
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