積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
瑞月の顔を見たら心の底から嬉しさがこみ上げてきて、つい「ただいま」と言ってしまった。それにつられただけだろうが、瑞月も「お帰りなさい」と返してくれた。それはまるで本物の恋人同士のようで、嬉しさに舞い上がりそうになった。リビングのテーブルには、本当に食事が用意されていたことにも感動した。嫌われてはいないようだと安堵し、瑞月の言葉、動作の一つ一つに一喜一憂している自分に、心の中で苦笑した。

数年ぶりに食べた瑞月の料理はやっぱりうまくて、学生時代のことが懐かしく思い出された。その気持ちのままに、俺はまた瑞月の料理を食べたいと口にしてみた。すげなく断られるだろうと思っていたのに、瑞月は瞳を揺らして言ったのだ。

『できる時は用意してあげてもいいよ』

瑞月の表情にどきりとした。もしかしたら、俺をさらに意識し出しているのではないかと、胸の内に期待がじわりと広がった。このまま好きになってほしいと、願う。その期待と願いが早く現実のものになってほしいと祈るような思いで、俺は彼女の唇を軽くついばむようにキスをした。

『キスしていいなんて言ってないよ』

瑞月は抵抗を表すかのようにそう言ったが、その声は弱々しかった。

瑞月の心が解け始めていることを感じた俺は、今度こそ瑞月を手に入れたいと、心の中で強く思った。
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