積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
瑞月は元カレから復縁を迫られていたようだった。

こいつが瑞月を傷つけた男かーー。

そう思ったら、職業柄感情をコントロールするのは得意なはずなのに、俺は冷静さを失った。気づけば売り言葉に買い言葉で、俺はその男に向かって結果的に、間接的に、瑞月への想いを吐露する言葉を口にしてしまっていた。当然瑞月もそれを聞いていた。

そんな形で自分の気持ちを知られたくなかった。時機を見て、今度こそしっかりと瑞月に向き合い、言葉にしたかったのに――。

このことが瑞月の心を揺さぶったのが分かった。

ひとまず食事に行こうと乗せた車の中で、瑞月は何かを考え込むような顔つきで窓の外を見ていた。

弁解か、説明か、補足か、とにかく何か言わなければと、落ち着かなかった。食事を終えて、このまま瑞月を部屋に送って行く気にはなれなくて、俺は彼女をドライブに誘った。

デートスポットのそこは夜景が綺麗に見渡せる高台にあった。開放的な雰囲気の方が素直になれるような気がしたのだ。

ベンチに座って何をどう話そうか考えていると、先に瑞月が話し出した。

はじめ、その内容は俺の体を心配するようなものだった。嬉しさに心がふわりと温かくなって、瑞月を抱き寄せたくなってしまった。しかしそれを我慢しているところに、彼女は言ったのだ。

『私とこうやって無駄な時間を過ごしていないで、将来のことを考えてお相手を探した方が、お互いにいいんじゃないのかな、って』

何をばかな事を言い出すのかと腹が立った。彼女にとっては不本意だったかもしれないが、あれほど熱く体を交わし合ったというのに、瑞月にとってはそれでも俺が「男」になることはないのか。俺を愛してくれることはないのかと哀しくなった。もう彼女を諦めた方がいいのだろうかという思いが、頭の中をちらとよぎった。

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