積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
その報告はある日、営業部からもたらされた。この数週間、派遣スタッフの鈴木幸恵の無断欠勤が続いているというものだった。

盗み聞きしたわけではない。私の席は部長席から近く、その前で話していた幸恵の上司にあたる高田課長の声が大きかっただけなのだ。

私が心配することではないし、心配してあげる義理もない。けれど、何かあったのだろうかと気になって、二人の会話に耳を傾けた。

課長は困った様子で総務部長に話していた。

「もちろん、本人の携帯にもかけてみました。しかしですね、何度かけても出ないんです。留守番電話にもメッセージを残しましたけれど、この一週間、まったくなんの返信もありません。派遣会社にも連絡しましたが、担当者も何も聞いていないと、困惑した様子でした。『こちらからも電話してみます』などと言っていましたが、どうなんでしょうか。それから三日ほどたっていますし……。彼女にはそんなに重要な仕事を任せていたわけではなかったのでそこは良かったのですが、今はちょうど忙しい時期でもありますし、連絡もなしでこんなに長く休まれてしまっては、こちらも困ってしまうんですよね」

最後の方の言葉は、愚痴っぽくなっている。課長は肩で大きく息をつくと、総務部長に言った。

「鈴木さんの変わりに、別のスタッフを入れて頂くわけにはいきませんか」
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