積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
「そういう状態なのであれば、そのスタッフとの契約は切るしかないでしょうね。ただし、次の人をすぐにというわけにはいかないかもしれませんよ。その間、部内でなんとか仕事は回せそうですか?」

「そこは、なんとか。そんなわけですので、できる限り早くご対応頂ければ助かります。よろしくお願いします」

課長は部長の返答を聞いて、ひとまずは安心したらしい。ほっとしたのが分かる様子で肩を揺らすと、最後にもう一度部長に頭を下げて総務の部屋から出て行った。

やれやれと言いたげに、部長がふっとため息をもらした様子が目に入った。

見られたと思ったのか、部長は苦笑しながら私に言った。

「大原さん、今の話、聞こえていたよね?すまないけど、派遣会社の担当者に連絡入れてもらえるかな。派遣スタッフのことで相談があるということで、明日の午前中にでも来てくれるようアポを取ってほしいんだ。時間は何時でもいいから」

「はい、かしこまりました」

私は頷くと、早速部長の指示通り、幸恵が所属する派遣会社に電話をかけた。

その翌日の午前中、派遣会社の担当者が頭を低くして、約束の時間にやって来た。

部長から事前に言われていた通り、応接室に通す。

「部長、派遣会社の方がいらっしゃいました」

「ありがとう。あぁ、高田課長にも連絡してもらえるかな。それと、悪いんだけどお茶もね」

「はい」

私は頷くと、高田課長に連絡を入れた。

『今行きます』

そう言って課長は慌ただしく内線を切った。

その後、お茶の準備をしに行くことを隣の席の同僚に伝えて、私は席を立つ。給湯室で茶器の準備を始めていると、背後に人の気配を感じた。誰だろうと振り返って驚いた。
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