積年愛に囚われて〜兄的幼馴染は秘め続けていた想いを開放したい〜
看護師が出ていき栞と二人になった時、誰かがドアをノックした。それを耳にして、栞が思い出したように言った。

「そうだ、凜ちゃん!待ってもらってたんだ」

栞は椅子から立ち上がってドアを開けた。

凛がそうっと顔を覗かせ、私の顔を見るなり顔をくしゃくしゃにした。

「瑞月ちゃん!もうっ、一番目の緊急連絡先の番号になってるからって言って、あなたの会社から連絡が来た時には心臓が止まるかと思ったわ!大丈夫なの?ちゃんと私のこと、分かる?」

「分かるよ、ちゃんと。凜ちゃん、ごめんね、心配かけて……。あのね、頭の方は大丈夫みたいだって。ただ念のため、少し入院しなさいって言われたの」

「そうなのね。おばさんにも連絡しておいたからね。間もなく着く頃じゃないかしら」

「やっぱり、連絡したんだね……」

「当たり前でしょ!」

凛が呆れた顔をした時、ガラリとドアが開いて母が姿を見せた。

「瑞月!」

母は今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「お母さん……」

「大丈夫なの?いったいどうしてこんなことに……」

私は小声で謝った。

「心配かけてごめんなさい……」

「本当よ。こんなことになるんなら、家から離すんじゃなかったわ。凜ちゃんと栞ちゃんにも迷惑かけて。二人ともごめんなさいね。本当にありがとう」

母に頭を下げられて、栞と凜は困ったように顔を見合わせる。

栞が母の気持ちをなだめるように口を開いた。

「あたしたちは姉妹みたいなものだもの、そんな水臭いこと言わないでよ。それにね、ここはお兄ちゃんがいる病院なの。だからってわけじゃないけど、少しは安心してよ。ね?」

「そうだよ。うちらには遠慮なんかしないで、いくらでも頼ってくれていいから」
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